【ちょっと今から仕事やめてくる】を平成生まれのゆとりが読んでの評価感想。
この本を初めて読んだとき、もちろん一気読みだったし、けっこう泣いたと思う。
はじめはヤマモトが幽霊というようなファンタジーなのかと思っていたら、そうではなくて、少し悲しい物語が背景にあって、切なくなったのを覚えている。
私も営業を1年ほどやった。成績は、運が良かったのか優秀だった。朝から晩まではもちろん、土日も仕事のために勉強に使ったので、ただの根性でのりきった1年だったと思う。
それよりかは、本来の仕事に戻ってからの方が辛かった。上司によく怒られたし、アホなミスを4回した。データ作成のミスだ。
「3回はあっても4回は無い」と言った上司の言葉を今でもありありと思い出す。
あのころは、私も上司が大好きで、この人のようになりたいと思っていたのだけれど、その希望は裏切られることになる。
この【ちょっと今から仕事やめてくる】の主人公である隆の先輩である五十嵐という男のことを、私はうまく掴めないでいた。優しくフォローしてくれる先輩というのがどういうものなのか、私にはよくわからなかった。
しかし、隆が五十嵐先輩が自分のミスを偽装していた事実を知ったとき、隆が五十嵐先輩を恨まなかったことには驚いた。
ただ、少し冷静になって考えてみると、そうなるのも無理もないかもしれないと思った。
結局最後は、隆は会社を辞めることを選択する。この決断が良いか悪いかは隆が決めることなので、私は何も言えない。隆が辞めたことで会社が変わったかどうかもわからない。
ただ、無職という恐怖を乗り越えて、隆が本当にやりたい仕事を本気で探したのだということが最後にわかったので、この物語はとてもすてきだと思う。
正直、今回映画の前に、改めて自分で単行本を購入して、読み返すまでに、最後に心理カウンセラーになったオチは忘れていた。
それほどまでに、2年前の私はこの物語を、「隆が仕事を辞めるのか辞めないのか」という話として認識していたようだ。
そして、今日、改めて読み直したわけだけれど、2年のうちに私の状況もいろいろと変わっていたようだ。
2年前は「自殺」ということにはあまり現実感が伴っていなかった。
私が一番人生のどん底だと感じていたのは学生時代で、社会人になってからはいろいろあったものの、いざとなれば会社を辞めてもなんとかなると思っていたので、自殺までは考えていなかった。
しかし、「家族の自殺」という視点で考えると、とても怖くなった。
ヤマモトには双子の兄弟がいて、その兄弟を失ったわけだ。
私にも兄弟がいる。弟と妹だ。私はシスコンやブラコンと言われようとも、けっこう二人のことが好きらしい。
よく会社でも二人の話をしてからかわれるのだけれど、その二人とは別々に住んでいる。3人バラバラだ。
もし、その兄弟が自殺でもしたら、私はどうやって生きていったら良いのだろうと思うと、この本を読んで、涙が止まらなくなった。
ヤマモトが、兄弟の死をどうやって乗り越えたのかわからない。
両親も息子の死に悲しみ、その息子とそっくりな自分。
後悔してもしたりないのは当たり前だろう。
そして、そのヤマモトが初対面の隆を助けようと、カバンから個人情報を盗み見る行動をしたわけだけど、その行動がわかりすぎてとてもつらくなった。
何としてでも助けたい。それだけだったのだろう。
なんとしても、どんなことをしてでも、この人を助けたいのだと思わされるぐらい、彼の傷は深かった。
ヤマモトはちゃっかり隆の家も知っていたし、会社にまで来ていたので、他にもいろいろしていたのだろう。
それが、とても、とても、解りすぎて、私はとてもじゃないが、他人事とは思えなかった。
山本純はもうこの世にいない。
けれど、山本優は、きっとこれから何人もの人生を変えていくのだと思う。
いつか、ちゃんと実家に返って、両親と笑顔で話せる日が来ていることを願ってやまない。
自分の話をすると、私は結局仕事を辞めなかった。
私の場合、辞めたのは部長だったわけだった。
私は今の会社に入って3年経って初めて、自分はこの仕事が好きなのかもしれないと気づいた。
5年経って、どうせならもう少しやりたいなぁと思った。
7年経って、一緒に仕事をしている仲間に恩返ししたいなぁと思った。
会社は人であるのだと思う。
この物語に出てくる部長も、五十嵐先輩も、【会社】というモノではなく、そういう人達が集まって会社になっている。
「企業とは、人を止める生業をするところだ」と言った人を知っている。
人を留める場所というのは、人が場を作っているからこそ、その場は人によってどのようなものにもなる。
最近、私の会社も電通での自殺問題を受けてか、労働基準について厳しくなったように感じる。
それについては別の日記でぼやいているのだけど、働くということは悩みが付きないことのようだ。
【ちょっと今から仕事辞めてくる】で隆も言っているが、簡単なことでは無いのだと思う。
だからこそ、悩みは付きなくていいと思うし、悩み続けるのも悪くない。
ただ、ちょっと、自分の大切な人の気持や、家族の想いを考える余裕を必ず持つこと。それが大切なのだと思う。
結局は自分の人生だけれど、家族の縁はきろうと思っても切れないのでは無いかと思う。
例え身内がいなくても、天涯孤独の身になっても、切れない人間関係というものがあると思うから、人間関係の問題を無くすためにもがくよりも、人間関係の問題を良くするための方法を学んでいくほうが、私はとても建設的だと思う。
結局は人間関係を0にしてしまった人もいる訳だけど、私はあと50年は生きる予定なので(笑)、本当に切れたのかどうかなんて解らない。
もうちょっぴり、人にやさしくありたいなぁと思わせてくれた小説でした。
北川恵海さん、本当にありがとうございました。
この映画化をきっかけに、より多くの人にこの物語が届くことを願って。
投稿者プロフィール
- 【そらの書き物】の管理人。週刊少年ジャンプを愛読書に、会社員魂を燃やして働いていたけれど、退職して独立し上京。現在は法人化を目指してコツコツやってます。
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